2024年に執行される民法改正とは?
民法改正とは
そもそも民法とは、「民のための法律」の略で私人間の日常の生活関係をまとめている基本的な法律です。私人は一般的には個人のみではなく法人(事業者)も含むため、企業がビジネス上取り結ぶ際の契約についても民法が適用されます。
民法のうち債権関係の契約は1896年に民法が制定された後から約120年間ほとんど改正されていませんでした。しかし、社会・経済の変化に対応し見直しを行うとともに民法を国民一般に基本的なルールを適切に明文化したのが民法改正です。
成年年齢引き下げについて
民法改正で近年、一番話題になったのが「成年年齢の引き下げ」です。民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の一部を改正する法律が成立し令和4年4月1日から施行されました。成年年齢の見直しは約140年ぶりでした。
また、女性が結婚できる最低年齢が16歳でしたが、18歳に引き上げられ男女ともに18歳以上が結婚できる最低年齢となりました。成年に達すると親の同意を得なくても1人で有効な契約ができるようになります。携帯電話・クレジットカード・部屋を借りる契約など、未成年の場合は親の同意が必要ですが成年に達すると親の同意は必要ありません。
一方、成年年齢が18歳に引き下げになっても、これまでと変わらないものもあります。飲酒や喫煙、大型・中型自動車運転免許の取得などは20歳にならないとできません。
これからの民法改正案について
明治以来120年続く嫡出推定を見直し、2022年12月10日に改正民法が参院本会議で成立しました。2024年夏までに執行されます。
再婚禁止期間廃止
民法では女性のみ、離婚後6ヵ月という一定の期間を開けていないと再婚できないと定められていました。この期間を「再婚禁止期間」や「待婚期間」といいます。
そもそもなぜ再婚禁止期間が定められていて、女性のみが離婚後すぐに再婚できないのでしょうか。それは女性が再婚後間もなく産んだ子の父親が誰なのか、父子関係を巡るトラブルを事前に防ぐためです。婚姻中に妻が妊娠した子を、原則として夫の子とみなすことを「嫡出推定」といいます。現在であれば医学が発達しているため、DNA鑑定で医学的観点から父子関係の確定ができます。しかし民法が制定された明治時代は医学が未発達のため、女性が離婚後一定の期間を開けてないと再婚できないようにして、父親の推定を重ならないようにしていたのです。
民法が改正されてからは、再婚禁止期間は6ヶ月から100日になりました。更に離婚したときに妊娠していないことの医師の証明書があれば、離婚後すぐでも再婚できることになりました。
※2022年12月27日現在
無戸籍の子ども
2022年11月時点において法務省が把握している無戸籍者は793人でしたが、そのうち7割以上にあたる581人は「嫡出推定」を理由としていると発表されています。
再婚禁止期間中に元夫ではなく、別の男性との子ども妊娠し出産した場合、戸籍上は元夫との子どもと記載されてしまいます。元夫との子どもという記載を避けるために出生届を提出しないというケースが日本では多くあります。
出生届を提出せず無戸籍の人は、公的医療保険や年金制度に入ることができない問題や、教育を受けることが困難なこと、運転免許証・パスポートが取得できない、銀行口座が作ることができないなど、様々なデメリットがあります。このようなことを避けるために再婚後に生まれた子どもは期間を問わず、今の夫との子どもとみなされるようになります。これに伴い再婚禁止期間が廃止されることになります。
懲戒権の削除
改正法は親権者に子どもを戒めることを認める「懲戒権」の削除も国会で成立する見通しとなりました。現状としてはしつけとして児童虐待を正当化する口実に利用されているという指摘がありました。今後は体罰だけではなく、暴言など子どもの心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動も禁止とされました。
懲戒権の削除によって変わる虐待防止への未来
2011年に成立した民法改正の検討段階でも懲戒権の削除を検討していました。しかし「正当なしつけまでできなくなる」という意見があったことから見送られました。今回懲戒権が削除となったのは児童虐待が社会問題として深刻化されているからです。
2022年9月に、厚生労働省は2021年の児童相談所による児童虐待相談対応件数が20万7659件と公表しました。前年度より2615件増え過去最多を更新しています。児童虐待事件が増加している中、親権者が「虐待」ではなく「しつけ」だと主張するケースが多くみられるようになりました。どこからが虐待でどこまでは大丈夫なのか線引きがとても難しい問題ではありますが、今回懲戒権が削除されることによって児童相談所が以前より積極的に家庭内暴力に対応できるかもしれません。懲戒権を削除するということは体罰や虐待は絶対に認めないという強い社会へのメッセージになります。
まとめ
同性婚や選択的夫婦別姓制度など、ジェンダー平等に関しての民法改正の成立も皆さんは高い関心を持っていると思います。今後の未来は、その時代の価値観の変化に沿って民法も変えていくべきだと思います。