進化する太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」とは?

太陽の光を巧みに捉え、エネルギーに変換する新たな技術、それがペロブスカイト太陽電池です。この記事では、この革新的な技術が私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、その魅力と可能性を詳しく探ります。

 

 

ペロブスカイト太陽電池とは何か?

ペロブスカイト太陽電池は、新たな世代の太陽電池技術で、 太陽光を電力に変換する能力が特に優れています。従来の太陽電池と比べて、その柔軟性、効率、そして低コストが特徴です。その名前は、その構造が鉱物「ペロブスカイト」に類似していることから名付けられました。

 

この技術は、私たちが日常的に使用するスマートフォンやパソコンの液晶画面にも利用されています。さらに、家の屋根や窓ガラスなどにも適用可能な革新的な技術であり、その効率は従来のシリコンベースの太陽電池を凌ぐ可能性があるため、大いに期待されています。

 

 

なぜペロブスカイト太陽電池が注目されているのか?

この太陽電池の最大の魅力は、その 高いエネルギー変換効率と低製造コストです。これは、私たちが日常生活で使う電力を、より安く、よりクリーンに供給する可能性を秘めています。

 

例えば、太陽光パネルを軽量で薄い素材にできることで、新たなデザインや家具にも太陽電池を組み込むことが可能になります。身近な日常生活にも自然に溶け込むエネルギー源として、料理をする際に使う電気コンロ、洗濯機、さらには電気自動車まで、これらすべてがペロブスカイト太陽電池から得られるエネルギーで動く日が来るかもしれません。

 

また、この技術は、太陽光が直接当たらない場所や曇りの日でも効率的に電力を生成することができます。これは、従来の太陽電池では難しかったことです。

 

※エネルギー資源、技術についてはこちらも参照ください。
未来のエネルギー源 ~ 水素燃料電池 ~
「持続可能な未来のための雨水管理 ~エルニーニョと人工降水雨~」

 

 

国内での導入状況

国内では色々な機関でペロブスカイト太陽電池が導入されています。実例としては、次のようなものがあります。

 

産業技術総合研究所:AIと材料科学の融合

産業技術総合研究所では、ペロブスカイト太陽電池の研究開発に注力しています。具体的には、材料の研究や変換効率の向上だけでなく、劣化の原因となるメカニズムの解明や材料同士の相互作用について詳細に解明して、これらの要因が性能にどう影響するかを明白にする取り組みを行っています。さらに、AIを活用したマテリアルズ・インフォマティクスやプロセス・インフォマティクスを用いて、太陽電池の性能向上に繋がる新たな展開を模索しています。

 

出典:産業技術総合研究所

 

積水化学工業:国内初のビルへの実装

積水化学工業は、国内初となるフィルム型ペロブスカイト太陽電池を堂島関電ビルに導入しました。これは、2050年のカーボンニュートラル実現に対する取り組みの一環で、再生可能エネルギーを拡大させるための重要な試みの1つです。

 

出典:積水化学工業

 

 

トヨタと京都大学:自動車への応用

トヨタは、プリウスのプラグインハイブリッド車(PHV)や一部EVで車の屋根に太陽電池をつけるメーカーオプションを提供しています。その中で、トヨタはペロブスカイト型太陽電池において外部の機関と共同での開発を行っています。

 

出典:日本経済新聞 / 京都大学

 

東芝:世界最高のエネルギー変換効率

東芝は、独自の成膜技術を用いてフィルム型のペロブスカイト太陽電池を開発し、世界最高水準のエネルギー変換効率となる15.1%を達成しました。東芝は2025年までに、変換効率を20%以上に向上させることを目標に、受光部の面積を9平方メートルに拡大し実用化を目指しており、その際の発電コストは1 kWh当たり20円以下を目標に掲げています。

 

出典:東芝

 

理化学研究所:最先端研究で目指す環境負荷の低減

理化学研究所は、スパコン「京」を駆使した材料スクリーニングにより、低毒性の51個の元素のみで構成されるペロブスカイト太陽電池の候補化合物を発見しました。この発見により、新たな展望が環境への影響を減らす方向に拡がりました。

 

出典:理化学研究所

 

宇宙科学研究所:宇宙への挑戦

宇宙科学研究所では、ペロブスカイト太陽電池の宇宙での使用についての画期的な研究が行われています。この種の太陽電池は、放射線に対する強い耐性を持つことが特徴で、これにより、より厳しい環境下での宇宙探査が可能になる可能性があります。

 

出典:産業技術総合研究所

 

 

これからの暮らしにもたらす可能性

ペロブスカイト太陽電池は、見慣れた建物や多種多様なデバイスにも適用可能で、その可能性は広がっています。例えば、スマートフォンの充電や、都市の風景に溶け込む太陽光パネルなど、私たちの生活をエコフレンドリーで快適なものに変える可能性を持っています。

 

 

ペロブスカイト太陽電池の課題

ペロブスカイト太陽電池に対する期待は高まっていますが、同時に改良が必要な部分も存在します。特に、耐久性の向上が重要視されています。これらの問題を解決することで、ペロブスカイト太陽電池は私たちの日常生活の多くの領域で利用可能になる可能性が広がっています。

 

 

まとめ

ペロブスカイト太陽電池は、その驚異的なエネルギー変換効率とコスト効率で、私たちの生活に革新的な変化をもたらす可能性を秘めています。家庭用電化製品から車、そして宇宙探査に至るまで、その適用範囲は非常に広いです。

 

国内の様々な機関での導入事例を見ると、その可能性は現実のものとなりつつあります。しかし、まだ重要な課題も残されています。特に、耐久性の向上については解決すべき重要な課題です。

 

これらの課題を克服し、技術の進化を続けることで、ペロブスカイト太陽電池は私たちの生活をより豊かで持続可能なものに変えることができるでしょう。身近な場所にも応用されるこの技術が、私たちの暮らしにどんな影響を与えるのか、今後の展開に期待が高まります。

 

※ 持続可能な社会についてはこちらも参照ください。
「~持続可能な未来への鍵~ カーボンクレジットとは?」