乳糖不耐症を緩和?!「A2牛乳」の秘密 ~健康志向と持続可能な酪農業の未来~

健康志向が高まる中、最近注目を集めているのが「A2(エーツー)牛乳」。 乳糖不耐症の方でも接種できる可能性があるとされ、私たちの食生活に新たな選択肢を提供してくれるこの「A2牛乳」とは、一体どんなものなのでしょうか。
本記事では、A2牛乳の特長やその秘められた魅力に焦点を当ててみます。

 

A2牛乳とはどんなもの?

まず、A2牛乳とは何かを理解するために、牛乳の成分について簡単に説明します。
牛乳は水分以外に乳脂肪、乳たんぱく、炭水化物、ミネラル、ビタミンといった成分を含んでいます。その中でも、「乳たんぱく」は重要な役割を果たしており、その約3割を占めるのが「β-カゼイン」という成分です。

このβ-カゼインには「A1」タイプと「A2」タイプの2種類があり、その遺伝子の組み合わせによって、「A1A1」、「A1A2」、「A2A2」の3パターンに分けられます。このうち、 「A2A2」の遺伝子を持つ牛から搾乳されたミルクが「A2牛乳」 なのです。

 

出典:J-STAGE

 

A2牛乳の特徴は?

A2牛乳が注目されている大きな理由は、 「おなかにやさしい牛乳」とされる特性にあります。
実は、人間の母乳も「A2A2」で成り立っており、牛乳の中でも A2 牛乳は母乳に近いと言われています。このため、A2牛乳は 乳糖不耐症状が緩和されるとされ、健康志向の高い方や小さなお子様がいらっしゃるご家庭に向けて、新しい健康習慣のために注目されています。

 

A2牛乳はどうやって作られているの?

A2牛乳の製造プロセスは厳格な品質管理と特定の遺伝子を持つ牛の選別に基づいています。具体的な過程は次のようになります。

 

  • 牛の遺伝子検査: A2牛乳を生産するためには、 牛の遺伝子を検査し、「A2A2」の遺伝子を持つ牛を特定する必要があります。これは牛の尻尾の毛などから採取した細胞を用いて遺伝子検査を行います。これにより、「A2A2」遺伝子を持つ牛を見分けることができます。

 

  • 特定環境での管理: 「A2A2」の遺伝子を持つ牛は、他の牛とは別の環境で管理されます。この牛は厳重に分けられた環境で飼育され、特定のエリアや牧場で管理されることが一般的です。これにより、他の遺伝子の牛との交雑を防ぎ、「A2A2」遺伝子を持つ牛の品質を保ちます。

 

  • 搾乳と品質管理: 「A2A2」遺伝子を持つ牛から搾乳された乳は、 品質管理が徹底された環境で処理されます。搾乳後は特定の工場で生乳が集められ、低温殺菌や特定の製法に基づいて加工されます。これにより、A2牛乳の品質が保たれます。

 

このような厳密な管理と品質保証がA2牛乳の製造において重要な役割を果たし、消費者に安全で高品質な製品を提供することが目指されています。

 

A2牛乳と普通の牛乳の違いは?

A2牛乳と普通の牛乳との違いは、栄養成分の違いや消化のしやすさ、価格面など多岐にわたります。A2牛乳は健康面での利点が多く、主な違いとしては以下が挙げられます。

 

  • β-カゼインの違い: 普通の牛乳にはA1とA2の両方のタイプのβ-カゼインが含まれていますが、A2牛乳はA2タイプのβ-カゼインのみを含んでいます。これにより、A2牛乳は消化されやすく、おなかにやさしい牛乳とされています。

 

  • 健康への影響: A2牛乳の摂取は免疫力の向上や胃腸の不快感を緩和する効果が期待されます。体質などによっては、普通の牛乳に含まれるA1タイプのβ-カゼインが消化されにくく、不快感を引き起こすことがあるため、A2牛乳の摂取が選択されることがあります。

 

  • 価格差: 現在の市場では、A2牛乳は普通の牛乳よりも高価です。A2牛乳の生産には特定の遺伝子を持つ牛を育てる必要があり、それに関わるコストが普通の牛乳よりも高くなるためです。

 

A2牛乳製品の取り扱い店舗は?

A2牛乳の展開や製品の多様化が進んでいます。東京都や神奈川県を中心に展開するディスカウントストアのオーケーや、関東地方を中心に店舗展開するスーパーライフなどでA2牛乳が取り扱われています。特にオーケーでは、今夏からA2牛乳の販売を開始しましたが、予想を上回る売り上げを記録し、大きな人気を博しています。これはA2牛乳に対する高い需要と関心を示すものであり、市場での注目度の高さを示唆しています。

 

さらに、大手メーカーのカネカからも、A2牛乳を使用したオーガニックヨーグルトが発売されています。このヨーグルトは、有機JAS認証の商品であり、北海道の有機牧場で飼育された牛の有機生乳を使用しています。
このような商品の登場により、A2牛乳の利用範囲が広がり、消費者により多くの選択肢が提供されることとなりました。

 

※在庫や取り扱いは店舗や時期によって異なる可能性があります。

 

出典:
日本A2ミルク協会
カネカ

 

なぜ、取扱店舗が限られているの?

A2牛乳の取扱店舗が限られる理由にはいくつかの要因が絡んでいます。
まず、A2牛乳の生産量が限られるのは、牛の遺伝子構造が一つの理由です。牛はもともとA2遺伝子を持っていたとされますが、進化や交配によりA1遺伝子も発生し、現在はA1とA2の割合が逆転しています。現在、「A2A2」の遺伝子を持つ牛は全体の4割程度とされていますが、A2牛乳の生産を増やすためには、この遺伝子を持つ牛の頭数を増やす必要があります。しかし、牛の種付けから母牛に育て上げるまでに3年という期間がかかるため、生産量が制限されています。

 

さらに、A2牛乳の流通には追加の困難さが関わっています。通常の牛乳は複数の酪農家からミルクローリーと呼ばれるトラックで収集されますが、A2牛乳はA2専用のミルクローリーに入れて出荷する必要があります。そのため、別の集荷車両や追加の時間と費用がかかり、流通がより複雑になっています。

これらの要因が合わさり、A2牛乳の生産量が限られ、取扱店舗が制限される一因となっています。ただし、需要が高まれば生産拡大の余地も考えられますが、現在は生産上の制約が存在しています。

 

A2牛乳がSDGsに貢献する可能性とは?

現在、国内の酪農業は困難な状況に直面し、その持続性が問われています。そんな中、A2牛乳が酪農業に新たな希望をもたらし、持続可能な発展に向けた貢献を期待されています。主な理由は次の通りです。

 

  • 持続可能な酪農: A2牛乳の生産には、酪農業の持続可能性が関わっています。牧草飼料や糞尿の管理などの取り組みを通じて、地域の生態系や土壌を保護し、環境への影響を最小限に抑える努力がされています。

 

  • 地域社会への貢献: A2牛乳の生産は地域社会にもプラスの影響を与えます。地元の酪農家や小規模農家の支援、雇用の創出などが行われ、地域経済の活性化に貢献します。

 

  • 健康的な食品提供: A2牛乳は、その特性から消費者に健康的な選択肢を提供しています。健康な牛から生産された牛乳は、持続可能な食品供給の一環として、健康に配慮した食事選択を促進し、健康な生活様式を支援しています。

 

※地域経済の活性化については、こちらもご参照ください。
未利用の農地を活かして脱炭素社会へ

 

まとめ

A2牛乳は、健康志向の人々に向けた有益な選択肢です。個々の健康状態や好みに合わせて摂取することで、健康寿命を延ばすとともに、酪農業の活性化に寄与する可能性が高いことから、可能性持続可能な開発への貢献が期待されます。