アニメーションとSDGs ~持続可能な未来への視点~
アニメは、視覚的な魅力とエンターテイメントの価値を超えて、深い教訓と洞察を提供する独特のメディアです。地球環境や人種差別などの社会問題に対する洞察力は、アニメが単なる娯楽から一歩進んで、視聴者に対する教育的なツールとしての役割を果たしています。
本コラムでは、アニメのSDGsへの貢献やその潜在的な力に焦点を当て、未来を築くためのアニメ役割について探っていきます。
「アニメ」が創り出す世界とのつながり
アニメは、ただの娯楽ではなく、それ以上のものを提供します。物語の進行に伴い、現実世界で遭遇する問題や、未来の地球が直面する可能性のある様々な状況が描写されます。視聴者はエンターテイメントとしてアニメを楽しみつつ、無意識のうちにアニメの中で取り上げられる問題を現実世界に照らし合わせ、それを自己の問題として捉える機会を得ることができます。
視聴者は、アニメを通じて自分自身の視点を広げ、新たな視点から世界を見る機会を得ます。それは、視聴者が自分たちの周りの世界を理解し、それに対する自分たちの役割を再評価するものとなります。視覚的なストーリーテリングと組み合わせることで、自分自身と他者、そしてより広い世界との関係についてあらためて考える機会を得られます。
「アニメ」の教育的な側面
アニメは視聴者を物語の世界に引き込むだけでなく、さまざまな問題への洞察を提供します。物語の中のキャラクターそれぞれの視点から問題を見ることで、視聴者は問題を多面的に理解することができ、視野を広げることができます。
特に、日本のアニメはそのユニークな魅力と創造性により、世界中から注目を浴びています。そして、アニメは環境問題をはじめとする社会的な問題に対しても、大きな影響を与える可能性を持っています。これらの要素は、アニメが単なるエンターテイメントではなく、教育的な価値を持つツールであることを示しています。
スタジオジブリの「アニメ」が教える持続可能な未来への道
スタジオジブリの作品は、その美しいビジュアルと深いメッセージ性で世界中から高い評価を受けています。同社では、自然との共生や環境保護の重要性を描いた作品を多数発表しています。
ここでは、特に環境問題に対するメッセージ性が高い作品をいくつかご紹介します。
- 風の谷のナウシカ:
この作品は、自然と共栄することの大切さや、利益を優先し続ける文明の危うさを描いています。架空の存在を中心に物語は展開しますが、現代に生きる私たちの姿をリアルに映し出しています。一部の人類の利益優先で進化する文明の危険性、境遇の異なる民族とも対話することの重要性、そして人間だけではなく他生物の命も慈しみ、共存することの大切さを教えてくれます。
- もののけ姫:
美しい自然を食いつぶすことなく、すべての人間が豊かに暮らすすべはあるのかを考えさせる作品です。森林と古くからそこに住む神々を守ろうとするもの、そこに住む人々のために力を尽くすもの、そして人と自然、森の生きものが共存する方法はないのかと問うもの、この三者の視点を通すことでそれぞれの立場で問題を捉えることができます。また、作品中に絶対的な悪者はいないという点も特筆すべきで、人間と自然が共存することの重要性を教えてくれます。
- 天空の城ラピュタ:
自然と共栄することを忘れ、文明の進歩ばかり追い求める人々に対し、警鐘を鳴らすような作品です。映画が公開された1986年はバブル絶頂期で、ラピュタのように自然と共栄することを忘れ、文明の進歩ばかり追い求める人々に対し、警鐘を鳴らすような作品だと言えます。
- となりのトトロ:
自然との共生をテーマにした作品です。作品の中で見るような美しい自然のある風景は年々失われていく中で、人間と自然が共存することの重要性を教えてくれます。
これらの作品は、視聴者が環境問題について考え、行動を起こすきっかけを提供します。視聴者は、アニメを通じて環境問題についての理解を深め、自分自身の行動を見直すことができます。これにより、アニメは視聴者の環境意識を高める役割を果たしています。
SDGs推進の一環としての「アニメ」
アニメが持つ影響力は、環境問題に留まらず社会問題など広範囲に及びます。その一つが、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献です。
SDGsは、貧困、飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、水と衛生、エネルギー、経済成長、産業とインフラ、不平等、都市、消費と生産、気候変動、海洋生物、陸上生物、平和と公正、パートナーシップの17の目標から成る国際的な取り組みです。これらの目標は、2030年までに達成することを目指しています。
アニメは、これらの目標に対する認識を高め、行動を促すための強力なツールとなり得ます。アニメは視覚的なメディアであるため、視聴者に対して直感的で感情的なメッセージを伝えることができます。
例えば、資源の有効利用や廃棄物の削減といったテーマを扱った「もったいないばあさん」は、SDGsへの貢献という観点から見ても非常に重要な作品です。この作品は、物を大切にすること、分別して資源として再利用することの大切さを、子どもにわかりやすく伝えています。
特に、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に直接関連しています。この目標は、持続可能な消費と生産を促進することを目指しており、「もったいないばあさん」はまさにその精神を体現しています。
さらに、「もったいないばあさん」は、物事を大切にするという基本的な価値観を育むことで、他の多くのSDGsの目標にも間接的に貢献しています。例えば、資源を大切にすることは、貧困の削減(目標1)や飢餓の撲滅(目標2)、気候変動の対策(目標13)など、さまざまな目標の達成につながります。
幅広い年齢層にアピールすることができることもアニメ特有の利点です。中でも、特に若者に対する影響力は非常に強く、アニメはSDGsの理解と支持を広めるための重要な手段となり得ます。
「アニメ」産業の取り組み
アニメ産業自体もSDGsに貢献するための取り組みを行っています。その一つの例が、トムス・エンタテインメントの「アニメSDGs」です。このプロジェクトでは、アニメ産業がSDGsにどのように貢献できるかを探求する取り組みで、「作り方改革」「産業構造改革」「人づくり改革」の3本柱を中心に展開されています。
これらの取り組みを通じて、トムス・エンタテインメントは、「アニメSDGs – 2030年までに持続可能な日本アニメ産業の未来を創る」というビジョンを実現しようとしています。これは、アニメ産業がSDGsに貢献するだけでなく、アニメ産業自体が持続可能であることを目指す、画期的な取り組みです。この取り組みは、アニメ産業が社会的な問題に対してどのように影響を与え、持続可能な未来を実現するためにどのような役割を果たすべきかを示しています。
まとめ
このように、アニメは、視聴者に対して社会的な問題について考え、行動に移すきっかけを提供します。そして、その力を活用して持続可能な未来を実現するための意識改革を促すことの重要性を、様々な作品を通して教えてくれます。
また、アニメ産業自体もSDGsに貢献するための取り組みを行い、持続可能な未来に大きな貢献を果たしています。こうした取り組みにより、私たちはあらためてSDGsが掲げる目標について自分自身がどのように貢献できるかを考えるきっかけを得ることができます。
アニメを通じてSDGsについて考え、行動することで、地球環境を取り巻く様々な問題は解決の方向へ導かれ、持続可能な未来の実現に貢献することができるでしょう。
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出典:
トムス・エンタテインメント
映像産業復興機構
環境省
もったいないばあさん
スタジオジブリ