メリットたくさん!バイオマスプラスチック
環境に優しい紙ストローを採用する企業が増え、話題になっていますが、プラスチックにも環境に優しいものがあることをご存じでしょうか?
その名も「バイオマスプラスチック」。一般化すれば、多くの環境問題を解決に導くのではないかと期待大!一体どういう風に環境に優しいのか、デメリットはあるのかを詳しく説明していきます。
環境問題打破のホープ!?
私たちが日常的に使うプラスチック製品は、石油原料のものがほとんどです。
しかしポイ捨てなどの不適切な方法での廃棄が多く、海洋汚染をはじめとする重大な環境問題につながっています。また、製造や廃棄時に大量に発生するCO2を始めとする温室効果ガスが気候変動の要因のひとつと言われていることはとても有名ですよね。
気候変動が進むと、平均気温の上昇に伴う体調不良(熱中症など)の増加があったり、台風の大型化が進んだり、海面上昇が起こったり、いろいろな問題が進んでしまうと言われています。
日本でも、ここ100年で1.24度の割合で上昇しています。気温が一度上がると国内の猛暑日が1.8倍増えると予想されています。実際に2022年の夏が非常に暑かったのは記憶に新しいのではないでしょうか。
また、石油や天然ガスは化石資源と呼ばれています。
化石資源は、約1億9千万年前が起源となり、動物の死骸や植物などが地中に埋まったあと長い年月をかけて地球が作り上げたものです。残り約50年で、石油や天然ガスを使い切ってしまうことが推定されているため、化石資源の節約のためにも脱プラスチックの動きが世界各国で積極的に進められるようになりました。
実は日本は一人当たりのプラスチック容器排出量が、年間で世界二位と言われており世界から見ても、私たちは特にプラスチックを消費しています。
そうした背景があり環境に優しい「バイオマスプラスチック」に、近年関心を向けられるようになりました。
バイオマスプラスチックとは、
・バイオマス原料プラスチック
・生分解性プラスチック
この2種類のプラスチックの総称です。
バイオマス?生分解性?聞き馴染みのない言葉ばかりで、戸惑ってしまいますよね。また、種類によっては自然に還らなかったり、リサイクルが難しかったりと、2種類で大きく性質が異なります。
それぞれの性質を理解した上で利用することで、バイオマスプラスチックを本当に環境に優しく利用することができます。詳しく見ていきましょう。
バイオマス原料プラスチック~“バイオマス”とは~
”バイオマス”という言葉。プラスチックだけではなく、”バイオマス発電”や”バイオマス資源”など、いろいろな場面で使われています。
バイオマスは「再生可能な、生物由来の有機性資源」、つまり“植物”のことです。バイオマス原料のプラスチック=植物原料のプラスチックということ。原料として主に使われるのはトウモロコシやサトウキビなどで、カーボンニュートラル(※)の性質があるとも言われています。
※ゴミとして燃やす際にCO2を排出してしまうが、植物が育つ際に光合成でCO2が吸収されるため、大気中のCO2量に影響を及ぼさないという考え
そのため、バイオマス原料プラスチックが普及することで、CO2を劇的に削減できるのではないかと大きな期待が寄せられています。
CO2の削減だけでなく、化石資源と異なり使い切ってなくなってしまう心配がないことも大きなメリットのひとつです。(植物原料のため、繰り返し育てての採取が可能。)
またCO2を始めとした温室効果ガスは地球温暖化の原因と言われ、全世界で温室効果ガスを減らすためにさまざまな奮励努力がされています。
日本では石油プラスチックごみの8割以上がリサイクルされていると言われていますが、実は燃焼時に生じるエネルギーを発電などに利用するための「熱」としての再利用(=サーマルリサイクル)となり、リサイクル時に温室効果ガスを大量に排出しています。
ゴミそのものを再利用することではないため、海外ではリサイクルの一種として扱われていません。
ちなみに下記のようにバイオマス原料の配合率によっても細かく分かれます。
- 全面的バイオマス原料プラスチック
→100%バイオマス原料のもの
- 部分的バイオマス原料プラスチック
→石油由来成分の原料(従来のプラスチック)+バイオマス原料のもの
①に比べると環境負荷は高くなりますが、②もバイオマスプラスチックとして扱われることがほとんどです。しかし、②も一般的な石油原料のプラスチックに比べると環境への影響は少ないため、環境には優しいものではあります。ただ、②はリサイクルの際に必要な工程である分離ができないため、焼却処分を前提とした場合のみ環境に良いと言えるでしょう。
また、①は強度等の面から実用化されておらず、現状の普及率は②が高くなっています。
生分解性プラスチック~「生分解性」とは~
生分解性とは、微生物等の働きにより、水とCO2にまで分解ができる性質です。
現状、水(海洋)・土壌環境・コンポスト(高温多湿)で、分解ができるものがあります。
生分解性プラスチックは、焼却処理が不要のため環境に優しく、ポイ捨てや不法投棄があったとしても、自然と分解されることは大きなメリットです。
生分解性プラスチックも、二種類にわかれます。
①バイオマス原料の生分解性プラスチック
②化学資源原料の生分解性プラスチック
更に、こちらにも全面的なものと部分的なものがあり、現在、日本国内で普及しているものの7割は①であると言われています。
近年は、海洋プラスチックごみ問題の解決のために、生分解性プラスチックが注目を浴びており、発展のために多くの研究が行われています。
海洋プラスチックごみ問題とは、プラスチック製品がポイ捨てや不適切な処理により海に流れ、大きな影響を及ぼしてしまうことを指します。
プラスチック製品を大量に飲み込み、餓死したイルカやクジラ等の海洋生物が打ち上げられたニュースは、多くの方が一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
特にレジ袋は、海洋生物の多くがエサとするクラゲによく似ているため、誤食が特に多いと言われています。他にも海に捨てられた漁網や釣り糸はゴーストネットと呼ばれ、絡まってとれなくなってしまった多くの海洋生物の命を奪っています。
また、海洋生物の命を脅かすだけでなく、漁業や養殖業、環境業にも大きな影響が出ており、問題解決が急がれています。
生分解性プラスチックが普及すれば、こういった海洋プラスチックごみ問題の大部分を解決できるのではないかと言われています。
ただ、完全に分解されるまでに数カ月かかることや、適切な環境でない場合は分解されず残ってしまうところは欠点と言えるでしょう。
微生物の種類や酵素の密度が環境によって異なり、分解が進むための条件がそろっていない場合は一切の分解が進まないので、廃棄の際には注意が必要です。
現在開発されている生分解性プラスチックで、水(海洋)、土壌環境、コンポスト(高温多湿)すべての環境下で分解できるものは存在していません。
どのような用途がある?
実は既に製品化が進んでいるものも多く、用途は多岐にわたります。
・食品容器
・レジ袋
・ゴミ収集袋
・包装(非食品)
・衣料繊維→ストッキング等
・電気・情報機器
・OA機器
・自動車→フロントグリル
・人工芝
2020年にレジ袋有料化が開始されましたが、バイオマス原料を25%以上含むものは無料での配布が可能です。このように既にわたしたちの生活にもすでに浸透し始めています。
多くの用途を期待されているバイオマスプラスチックですが、まだまだ課題も多く、手放しで普及を推し進めることができかねてしまうのが現状。
今後、研究や開発が進むことで、より環境にも優しい製品に進化していく可能性は非常に高いため展開に期待ができますね。
また、バイオマスプラスチックの製品を積極的に購入することで、需要が可視化され、企業等の研究で優先されていくことでしょう。
利用後のバイオマスプラスチックを廃棄する際に、どういった方法を取れば環境に一番優しいのかを調べたり、理解したり、他の人に共有することも非常に大切になっています。
調べたり、理解したりすることは、正直面倒に感じてしまうことも多いですが、ひとりひとりの小さな選択が、地球環境を救う大きな未来に繋がっていくでしょう。