クリスマスツリーの危機:気候変動がもたらす生産不足

クリスマスの季節が近づくと、街は華やかなイルミネーションで彩られ、各家庭にはクリスマスツリーが飾られます。しかし、近年、クリスマスツリーの生産不足と気候変動が深刻な問題となっています。これから迎えるクリスマスシーズンに向けて、クリスマスツリーに焦点を当ててみます。

 

クリスマスツリー市場の変遷

クリスマスツリー市場は、基準年の終わりまでに約56. 1億米ドルに達し、予測期間中は4.31%以上の成長率を記録すると予想されています。市場は新型コロナウイルス発生前の水準に戻りつつも、その影響は依然として顕著です。

 

出典:Mordor Intelligence

 

 

クリスマスツリーの生産状況

数々の要因により、クリスマスツリーの生産不足が引き起こされています。まず、需要と供給の不均衡が挙げられます。クリスマスツリーの需要が増加している一方で、供給が追いつかず、市場はその不足を感じています。

 

さらに、クリスマスツリーの育成には時間がかかるため、需要の急増に追いつくことが困難です。品質の高い木を育てるには手間と時間が必要であり、需要の予測が難しい状況下で、供給を確保するのは一層困難になっています。物流の危機や輸送コストの急増も、価格の上昇に拍車をかけています。

 

環境の変化も重要な要因です。気候変動による異常な気温上昇や水不足、そして人手不足は、作物の質と量を低下させ、クリスマスツリーの生産にも直接的な影響を与えています。これらの要素が合わさって、市場におけるクリスマスツリーの供給不足を招いています。

 

※ 気候変動ににつきましてはこちも参照ください 
~持続可能な未来への鍵~ カーボンクレジットとは?
「持続可能な未来のための雨水管理 ~エルニーニョと人工降水雨~」

 

 

気候変動のクリスマスツリーへの影響

気候変動がクリスマスツリーの生産に与える深刻な影響は、生産地域で顕著に現れています。例えば、オレゴン州では山火事や干ばつが農家の減少を招き、過去5年間で生産量が27%も減少しました。ツリーの農場経営者によれば、約4万本のツリー苗木の95%が枯れるなど、深刻な被害が出ています。

 

さらに、過度の乾燥や異常気象、害虫の発生もツリーの成長に悪影響を及ぼし、生産量を減らしています。長期的な気候の変化は、適切な育成条件を維持することを困難にし、これらの植林地域におけるクリスマスツリーの品質や量に大きな影響を与えています。

 

気候変動が進行すると、クリスマスの伝統も大きな変化を迎える可能性があります。例えば、日本では気温上昇により全国的に年間の降雪量が減少すると予想されており、今後、12月の降雪量も北海道や山間部を除いて多くの地域で減少することが予測されます。

 

さらに、気候変動はクリスマスツリーの成長期間にも影響を与えています。通常、クリスマスツリーの成長には10年前後かかりますが、気候変動が進むと成長期間が長引く可能性があります。これは供給量に影響を及ぼし、生産不足を加速させる恐れがあります。

 

これらの課題はクリスマスツリーの価格上昇にも繋がっています。以前には、人工樹木のクリスマスツリーの価格が最大25%上昇した報告もありました。物流の危機と輸送コストの急上昇も価格高騰の原因となっています。

 

出典:WBS

 

 

持続可能なクリスマスツリーに対する対策

この問題への対処には、クリスマスツリーの栽培方法を見直し、持続可能な方法を検討する必要があります。まず、地域に適した樹種の選定や水資源の効率的な利用、そして気候変動への適応策の導入が急務です。これらの取り組みによって、ツリーの生産にかかる負荷を軽減し、持続可能性を高めることが期待されます。

 

消費者側でも、リサイクル可能な人工ツリーや再生可能な素材から作られたツリーを選ぶことが重要です。自らが持続可能な選択をすることで、需要側からも環境にやさしい選択が促進されます。

 

さらに、世界的な取り組みとして、森林保護や植林活動の支援が必要です。クリスマスツリーの需要を満たしつつ、森林の保全や再生を促進することで、気候変動の影響を軽減し、将来的な生産不足のリスクを減らすことができます。持続可能なツリーの選択と森林保護は、環境への貢献だけでなく、長期的なクリスマス文化の維持にも寄与します。

 

 

国内で展開される持続可能な取り組み

 

持続可能なアートクリスマス:東京・芝公園でのサステナビリティ体験

12月14日から25日まで、東京都立芝公園4号地広場で「Re:Birth ART Christmas in SHIBA PARK」というイベントが開催されます。ここでは東京の景色を楽しみながらSDGsを体験できます。

世界的にクリスマス後のゴミ問題が取りざたされており、イギリスやアメリカではリサイクルやプラスチック削減に向けた動きが出ています。このイベントを主催するリバースアートクリスマス実行委員会は、廃材からクリスマスツリーを作成し、クラウドファンディングで資金を集め、イベント後はリサイクル品として提供する取り組みを展開します。俳優の片桐仁さんと廃材再生師の加治聖哉さんが、廃材を利用したクリスマスアートツリーを制作します。

 

出典:共同通信 

 

★ 廃材再生師の加治聖哉さんの活動についてはこちも参照ください★

『アート×自然×テクノロジーが創るサステナブルな未来/』

 

循環型クリスマス:大丸のフラワーポットプロジェクト

大丸福岡天神店では循環型社会の一環として、クリスマスイベント「Circulation(循環)~circulation to the future(輝く未来への循環)」を通じて、海洋プラスチックなどの廃棄物をアップサイクルする取り組みを行いました。

 

このプロジェクトは国内外の団体と協力して展開され、地域のプラスチック廃棄物を有益な資源に変える活動で、<プレシャスプラスチック>の一部として誕生しました。さらに、世界中で活動するプレシャスプラスチックの団体と連携し、2023年8月に日本全国のメンバーと共にプロジェクトをスタートさせました。国内からは8つの団体、海外からは3つの団体が参加し、各国・地域の廃プラスチックがフラワーポットに変身し、ツリーを彩りました。

 

出展:大丸福岡天神店 

 

本物のもみの木で環境に貢献:IKEAの持続可能なクリスマス

IKEAでは、生木のもみの木を販売しています。IKEA Familyメンバーは、使い終わったもみの木ともみの木を購入する際に発行される「ツリー購入証明書」を返却すると、1,000円分のクーポンとして利用できるサービスを提供しています。これにより、ツリーの再利用が促進されます。

 

返却されたツリーは、木片チップになって生ごみなどと混ぜて堆肥にされたり、ウッドチップなどの燃料に変わるなど、さまざまな再利用方法が取られています。

 

出典:IKEA

 

「海のツリー」が伝えるメッセージ:セントレアの環境保全活動

中部国際空港(セントレア)では、クリスマスツリーのオーナメントに海洋プラスチックごみのアップサイクル製品や再生サイクル用プラスチックチップを使用しています。この「海のツリー」は、空港周辺の海洋環境保全活動を促進し、SDGsの目標である「海洋の豊かさを守ろう」に貢献しています。

 

出典:セントレア 

 

 

まとめ

クリスマスツリーの生産不足と気候変動は、私たちが直面している環境問題の一例に過ぎません。しかし、これらの問題を通じて、私たちは地球温暖化の現実と向き合い、持続可能な未来を築くための行動を考えるきっかけを得ることができます。このクリスマスシーズン、私たちは一人ひとりが地球のために何ができるかを考え、行動に移すことが求められています。

 

出典:JAPAN PAVILION