ヒートアイランド現象を分かりやすく解説!

一度は聞いたことがあるヒートアイランド現象。都市の気温が都市以外の気温よりも高くなる現象をヒートアイランド現象といいます。なぜ問題になっているのか皆さん知っていますか?今回はこの現象を分かりやすく解説いたします。

ヒートアイランド現象とは?

ヒートアイランド現象とは何か

都市の気温が都市以外の気温よりも高くなる現象をヒートアイランド現象といいます。

実は歴史は古く、19世紀のヨーロッパの大都市で既にヒートアイランド現象が起きていたとされています。

気温の分布図を見ると都市だけが暑くなるため島のような模様が浮かび上がります。

出展:気象庁

 

ヒート:暑い+アイランド:島=ヒートアイランドと覚えていただけると、この現象の意味や構図が理解しやすいと思います。

関東の場合、東京都市圏が中心になり、高温となっていることが図から分かります。

それではなぜ都市化した地域だけ気温が高いのか?考えてみましょう。

なぜヒートアイランド現象は起きるのか

都市化した地域は経済が発達し沢山のモノが集まり、人が集まります。それに伴って人が快適な暮らしを送れるよう、建物や交通手段も整備されてきました。つまり、人が暮らしやすいように環境を変えたことが大きな原因といえます。

原因1.コンクリートやアスファルト

元は草地や森林だった土地を開拓し今の都市ができています。元々あった植物には水分が含まれており、太陽から受けた熱を水分と一緒に蒸発させて大気へ放出していました。しかし森林は伐採され、草地はコンクリートやアスファルトにかわりました。

夏にアスファルトが熱いと感じたことはありませんか?実は夏場の日中には、表面温度が50~60℃にまで上がっているのです。さらにアスファルトは熱を溜め込む性質があり、溜め込んだ熱を日中だけでなく夜間も大気へ放出し続けます。これにより気温の低下が妨げられ、熱帯夜が引き起こされます。また、アスファルトは太陽から受けた熱を四方八方へ反射するため、熱がより拡散することになります。

原因2.高層ビル

高層ビルの間から空を見上げると、周りに何もない場所から見上げる時よりも空が見える範囲が少なくなりますよね。この見え方を天空率というのですが、天空率が低い(空が見える範囲が狭い)と地面の熱がこもってしまいます。

また、高層ビルに風が当たると風速が弱まるため地面に吹く風が弱まったり、高層ビルが密集していると風の流れが悪くなるので地面まで風が届きにくかったりします。

ビル自体からの排熱や屋上の高温化もヒートアイランド現象の原因になります。

原因3.エアコンや車などの人工排熱

身近な人工排熱で考えるとエアコンや車の排熱です。住宅地を歩いていて熱風を感じたことはありませんか?これはエアコンの室外機から出ている熱で、室外機は熱交換を行うものなので、熱風が出てしまいます。

車の排気ガスは地球温暖化の原因で知られていますが、これはヒートアイランド現象の原因でもあります。排気ガスは熱を帯びておりエアコンの室外機と同様、排熱にあたります。都市では多くの車が行き交っているため排熱量が高くなってしまうのが現状です。

他にも建物からの排熱や交通機関の排熱、工場の排熱など人工排熱は様々です。これらの原因により都市では100年間で3度も気温が上がっています。地球温暖化による影響が大きいですが、都市の気温上昇は著しいです。

 

ヒートアイランド現象が引き起こす影響

熱帯夜や熱中症患者の増加

原因でも触れましたが、アスファルトに溜め込んだ熱は夜間にも大気へ放出し続けます。そのため熱帯夜が生じます。寝苦しくてエアコンをつければ室外機から排熱され、悪循環を生みます。だからといってエアコンを使うなということではありません。それこそ熱中症になりますので、適度に使用しましょう。

また、日中は極端に気温が上昇することで人体への影響が発生します。それが熱中症です。環境省が出しているデータでも都市部は熱中症患者が多いと記載されています。気温の高い日に外出する時は適度な時間で、水分をこまめにとるのが良いそうですよ。

 

ヒートアイランド現象のQ&A

ヒートアイランド現象は温暖化と同じ?

地球温暖化も、気温が高くなる環境問題として、非常に有名です。それでは、ヒートアイランド現象は地球温暖化に含められるのでしょうか?

答えは「No」です。

私たち人間の活動が原因で、気温が上がってしまうという点では同じですが、現象の規模が全く異なっているのです。

ヒートアイランド現象は、都市部を中心とした限定的なものに対し、地球温暖化は地球規模での気温上昇になります。

どのくらい気温があがっているの?

1927年から2018年までの過去100年の平均気温を見てみると、名古屋では「2.8℃」、大阪では「2.6℃」、そして東京では「3.2℃」も上昇したと言われています。

その他の中規模・小規模の都市でも1℃前後の上昇が確認されています。

日中と夜間での違いは?

気象庁が発表しているデータでは、都市化の影響が大きいとされているのは夜間です。

これは、大気層の発達に伴い、日中は都市に放出された熱が上空へ拡散されるのに対し、夜間は大気層の発達が弱く、熱が拡散されずに地表付近にとどまってしまうことが原因だと言われています。さらに、高層ビルが立ち並ぶ都市部では、風による冷却も妨げられてしまい、夜になっても地表近くの温度が下がりにくくなっています。

そのため、熱帯夜となり、暑くて寝苦しい夜が続いてしまうのです。

季節によって違いはある?

実は冬の方が、影響が大きいという観測データがあります。

これは主に夜間のヒートアイランド現象の強さの違いのためと考えられています。一般的に、晴れて風が弱い夜間において冷却度が高くなるのが夏より冬です。また、それぞれの季節で、起こる季節風等も影響していると考えられています。

 

ヒートアイランド現象を止めよう!

対策1.植物を増やす

建物の壁や屋上に緑のカーテンを設置すると室内に直接日が射さないため普段よりも涼しく感じられますし、植物の水分の蒸発とともに周りの熱を吸収しながら大気へ放出してくれるのでヒートアイランド対策にはうってつけです。

また、地面や屋上などに緑を増やすことで高温化を抑えられ、熱を放出する手助けにもなります。芝生とアスファルトを比べると2度も温度が変わるそうです。

対策2.水を撒く

地面に打ち水をしている光景を見かけたことがあると思います。これは水が蒸発するときに周りの熱を吸収して大気中へ逃がすため、直接地面へ水を撒くことは効果的です。ちなみに打ち水をすることで1度~2度下がると言われています。昼間は打ち水をしても蒸発までの速度が速いため、朝や夕方に打ち水をする方が効果的です。昼間にしてはいけないのではなく、蒸発速度が速いため水蒸気で湿度を多くしすぎない方が良いということです。

対策3.車での移動を控える

車の排熱を削減するために提案されたのがパーク・アンド・ライドです。

まず最寄り駅までは車で行きます。車は駅近くの駐車場に止めます。その後は比較的環境に良い電車等の交通機関を使うという方法です。渋滞に巻き込まれることがなく、ほぼ時間通りに到着できます。渋滞するとイライラしてしましがちですが、この方法ならばイライラも削減できて環境にも優しくて素敵ですよね。

対策4.舗装・塗装方法を工夫する

道路や屋上などに「保水塗装」を施すことで、雨などの水を吸収して蓄えることができ、内水と同じような効果が期待できます。

また熱を反射する効果のある塗料もあり、「そもそも熱をためない」対策をとることで、ヒートアイランド現象を防ぐことができます。

 

他にもミストを利用した対策や日除けの設置、風通しの良い構図での建築など様々な対策があります。

今後の気温上昇を避けるためにも、私たちも個人で身近なところからコツコツと対策していきたいですね。