放置竹林とは?~竹害が起こす被害とSDGsとの関わり~

古くから日本で親しまれている「竹」。

近年様々な要因から放置され、増えすぎている場合も多いです。放置竹林・竹害は一体どのようなものなのかを詳しく説明し、近年注目されているサステナブルな活用法などもご紹介します。

放置竹林とは?

人工で作られた竹林が、管理されず放置されているものが放置竹林と呼ばれます。

また、放置されたことで野生化して増殖したものもあり、竹林は日本における森林エリアの1%弱を占めていると言われています。

みなさんの身の回りにも竹林はありますか?

竹が増えた背景

なぜ、問題になってしまうほど竹が増えてしまったのでしょうか?

日本では古来より竹を重宝していました。縄文時代の遺跡から竹素材の製品が出土したり、竹林からストーリーが始まる「竹取物語」が執筆されていたりと、昔から身近にあったことが分かりますね。

そして、高収益であるタケノコの栽培が盛んになったことや日用品に利用される素材として竹が非常に役立っていたことを理由に1950年代以降、人工で多くの竹林が作られ、管理され始めました。

しかし、高度経済成長期に入ると安い輸入タケノコが増え、日用品としてはプラスチックがメインで使われるようになりました。これにより竹の需要が一気に少なくなり、後継者不足も相まって、間伐などの管理をされず放置されてしまう竹林が増えました。そして1990年代から放置竹林の問題性が取り上げられるようになりました。

竹の特性

竹が増えてしまった理由のひとつに「成長がめざましく速い」というものがあります。

なんとタケノコとして地上に出たのち、わずか10日後には1m近く成長。

一番成長が速いと言われている夏には、1日で1m以上成長する場合もあるのです!通常の樹木の中では成長が速いと言われている杉でも、10年で6mほどの成長スピードといわれているため、竹の成長力が驚異的であることが分かります。このように2~3か月で一気に成長したのち、スピードは緩やかになり2年後にはほとんど成長が止まります。なぜこんなに成長が速いのかというと、他の植物よりも、成長を促す「成長点」が多いからだそうです。

また、杉などの樹木と竹が大きく異なる点として、竹は根を浅く横にはります。

一般的な樹木が根を深くまっすぐはるのに対し、竹の根は地下茎と呼ばれ、横に広がる特徴があり、根をはる深さは30センチほどしかありません。

竹害って?

一見すると、植物である竹が増えることは大きな問題ではないのでは?と思われるかもしれません。

しかし、「竹害(ちくがい)」として補助金を出すほど深刻な問題となっている地域も少なくないのです。

繁殖力の高さから増殖してしまう

先述した通り、竹の成長の速さはかなり速いです。

そのため、杉やヒノキなどの植物の林に侵入した場合、成長した竹が周囲の樹木を圧迫し、日光を遮断してしまいます。他の植物の成長を妨げるだけでなく、枯らしてしまうほど日光を奪ってしまいます。

さらに、竹の地下茎は横に広がる性質があるため、雑草のごとく増殖してしまいます。

竹を枯らすために、昔からタケノコを含め毎年すべての竹を伐採(連年全伐/皆伐)する地域もありますが、枯れるまでに早くて数年がかかるためかなりの重労働といえます。またすべてを枯らせる前に中断すると、もとあった竹林に戻ってしまいます。

土砂災害が懸念される

森林と竹林の大きな違いとして、根の深さが挙げられます。

通常の樹木は根を深くまっすぐはります。そのため、雨が降っても「杭」の役割を果たし、土を支えることができますが、竹の地下茎は浅く横に広がるため、大雨が降ると竹林ごと斜面から崩れてしまう可能性が高いのです。さらにその繫殖力の高さから広範囲に竹林ができることで、さらに土砂災害が起こる可能性は高まってしまいます。実際に起きてしまった土砂災害の実例を後述します。

獣害に繋がる

農林水産省によると、令和2年度の野生鳥獣による農作物被害は、被害額約161億円となり、重大な問題になっています。このすべてが竹害によるものではないですが、竹林は人里に近いものも多いです。そんな竹林が放置され人間が立ち入らなくなると、イノシシやシカといった獣の住処になり、被害に繋がります。

竹害の実例

平成10年9月に高知市を中心に被害をもたらした前線性の集中豪雨。日降水量628.5mmを観測し、河川の氾濫が相次ぎました。

また、山麓部では129箇所という多数の崖崩れが起こり、その約1/3の地点に竹林が見られた※とのことです。

出典:科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)

対応策について

このように、さまざまな被害の要因になると考えられている放置竹林。

国や自治体では、補助金を交付するほど深刻であると捉えています。具体的にはどういった対策がとられているのか見ていきます。

補助金制度

放置竹林の対応策として、補助金制度を導入している地域も多くあります。ここでは愛知県美浜町を例に説明します。

美浜町では、放置竹林の対応策として「竹林整備事業補助金」を導入。“良好な里山環境の整備及び生物多様性の保全再生を図るとともに、竹林資源の有効活用を図ることを目的”としています。

町内にある竹林を管理する土地所有者または竹林所有者と契約を交わした方が補助事業者となり、対象事業は下記となります。

補助金はどちらの事業も1事業箇所につき50,000円ですが、予算状況によるため要相談とのこと。

出典:美浜町公式ウェブサイト

 

このようにさまざまな地域で、補助金制度が導入されているので、気になった方は最寄りの市役所などに問い合わせてみてください。

マニュアルの配布

京都府の15市町村にわたる地方機関である「山城広域振興局」では、放置竹林の整備マニュアルを作成しPDFで配布。放置竹林対策として有効なタケノコ掘りの方法や、調理法、放置竹林の整備の流れをわかりやすくまとめています。

年単位にわたって作業計画の例も取り上げているため、非常に有益なマニュアルとなっています。マニュアルは山城広域振興局ウェブページからダウンロードが可能です。

また、丹波篠山市でも竹林整備マニュアル『丹波篠山竹取物語』を配布。こちらは丹波篠山市役所農村環境課、市内各支所で配布されている他、市のHPからPDF版もダウンロードが可能です。

サステナブルな活用法も注目!

2015年の国連サミットで採択されたSDGs

17の目標を達成するために「脱プラスチック」は非常に重要です。日本でも2022年4月1日より「プラスチック資源循環促進法」が施行され、プラスチックごみの削減が義務化。それに伴い、エコ/サステナブルな素材が注目されています。

「竹」は成長スピードの速さと素材の耐久性からサステナブルな素材として注目を集めているのです!

どのように活用されているのでしょうか。

パウダー化して活用

竹はパウダー状にすることで、もともと含まれている乳酸菌がさらに増えます。そのため、竹パウダーは、家畜の飼料や消臭剤、ぬか床などさまざまな場所で活用することができます。ネット通販などでの購入が一般的ですが、専門業者に頼むことで伐採~粉砕までを依頼することも可能です。

紙にして活用

紙の原料にすることで、持続的に大量に竹を利用することができます。筆記用具としてや、ティッシュ/トイレットペーパーとして活用されています。

食品として活用

タケノコといえばメンマ!というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

地域の企業が地元の放置竹林から伐採したタケノコを使い、メンマの販売を行っています。2021年には「純国産メンマサミット」が発足。これは放置竹林問題の解決を目的に国産メンマを製造している企業や団体によるサミットです。

また甲南大学の大学生を中心に放置竹林問題に取り組む「BambooにThank you Project」が発足されました。「竹炭」を利用したスイーツの開発などに取り組み『甲南といえば竹』と言ってもらえるよう長期間の活動を目標としているそうです。

まとめ

私たち個人としてできるのは、竹製品を積極的に使ったり、普段食べるメンマやタケノコを日本製にしたりすることです。

日本人は古来より竹とともに歩んできました。知恵を使い、うまく活用していくことで放置竹林や竹害も減っていくのではないでしょうか。