異常気象とは?原因と今後

近年、春と秋のおだやかな気候の時間が短くなっているように感じられませんか?特に夏の猛暑が続き「日本から四季が消えてしまう」とも噂されているほど。また、大規模な台風や夕立などの異常気象が増加傾向にあります。

異常気象とはここ数年で経験していないような気象のこと指します。よく耳にする言葉ですが、実際の定義や、種類を知らない方も多いのではないでしょうか。このページでは異常気象の種類や原因、過去事例をわかりやすく解説いたします。

異常気象とは

異常気象とは地球上で今まで経験した気温や気候から、かけ離れた気象のことです。簡単に例えると、ここ何十年で経験したことのない暑さや大雨、暴風等。異常気象という言葉には気象に関係する機関ごとに定義があります。

日本の気象庁では、「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において、過去30年以上にわたって観測されなかったほど著しい値を示す場合」と定義しています。また、気候変動に関しての国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)ではより細かい基準を設定し、異常気象を定義しています。

種類

異常気象として扱われることが多い気象は以下の通りです。

  • 大雨
  • 洪水
  • 台風
  • ハリケーン
  • 干ばつ
  • 熱波
  • 寒波

どの気象も頻度としては多い気象ですが、例年より発生数や規模が大きいものを異常気象としています。洪水は気象ではありませんが、気象で起こる災害として、異常気象に含まれています。他にも初雪などの季節を象徴する現象(季節現象)の時期が大きくずれることも異常気象の一つとされています。

原因

主な原因は自然のゆらぎによるものです。自然のゆらぎとは偏西風やモンスーン、ブロッキング高気圧等の季節や時期で自然に起こりうる気象のことです。これらは昔から起こっている自然現象で、様々な要素が重なって異常気象となるため、予測と対策が難しいのが現状です。

しかし、様々な要素の中でも近年、人為的なものが絡んでいるという研究結果が出ています。それは、地球温暖化です。

異常気象と地球温暖化

異常気象の中に極端現象と呼ばれるものがあります。極端現象とは特定の地点と時期においてまれに起こる気象現象です。例えば、気温上昇や高温熱波、大雨、干ばつ等です。IPCCによると、この中でも気温上昇や高温熱波は地球温暖化の影響の可能性が高いといわれています。つまり地球温暖化を引き起こしている私たちにも原因があるのです。

このまま何の対策も取らなければ、21世紀末には平均気温が約4度上昇すると予測されています。温暖化により地球の平均気温が上がると、地表から蒸発する水分が増え、大雨の可能性も高まり、より多くの悪影響が及ぶと考えられています。

異常気象は増えている?

近年、急速に工業化が進行したことにより異常気象が多く発生するようになったと言われています。しかし、通信技術の発展により世界中の異常気象が報告されるようになったこと、人口の増加や建築物の老朽化により、社会的に異常気象によるリスクが高まったことなども一因とされています。今まで気が付けていなかった地域での自然災害も把握できるようになったため、異常気象が急増したように感じられるのです。

異常気象の状況

次に近年の異常気象の状況を世界と日本の視点から解説いたします。

世界の状況

現在、世界で多く発生している異常気象が熱帯低気圧や前線、モンスーンによるものです。これらの影響により、大雨や洪水、土砂災害などの被害が多く発生しています。

また、南アジア、中東、ヨーロッパ、南北アメリカでは熱波や寒波が、アフリカやオセアニアでは干ばつの被害も多く報告されています。

様々な気象災害は毎年起きていますが、年々気象災害による死者が増えています。しかし、これは、規模や頻度の増加によるものではなく、以前より金銭的に報告できる地域が多くなったことによるものです。それにより、今まで気が付けていなかった地域での自然災害も把握できるようになりました。

近年で、世界で発生した異常気象の内特に社会的被害が大きかった事例は以下の通りです。

場所 異常気象 影響
2010年夏 ロシア、ヨーロッパ ブロッキング高気圧による熱波 5万人の死者
2011年 インドシナ半島 モンスーンによる多雨、洪水 世界的な経済打撃
2012年冬 ユーラシア大陸 偏西風による寒波 800人の死者
2012年春 アメリカ 偏西風による高温、少雨 経済打撃 
2020年夏 アメリカ 異常気温(54.4度) 発電所の機能不全による  2日間の停電

アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、2020年の夏季(6〜8月)の北半球の平均気温は、1880年以降の観測史上で最も高くなったそうです。

日本の状況

日本では、各地で台風や大雨、洪水、土砂災害等の被害が多く発生しています。また、近年では広範囲で猛暑が発生しています。そもそも、日本の気温は年々上昇しており、特に夏と秋にかけて異常高温が多く見られています。また、気温の上昇のみではなく、冬の極度な気温低下も近年みられる異常気象の一つです。

近年、日本で観測された異常気象の事例は以下の通りです。

異常気象 原因
2006年冬 豪雪 全国23地点で当時最大記録を観測 寒気の流れやすい状況と偏西風
2009年夏 不順な天候 日照時間の減少、豪雨 エルニーニョ現象や熱帯の海面水温上昇
2010年夏 猛暑 過去一番高い平均気温 エルニーニョ現象の終了とラニーニャ現象
2013年夏 高温、豪雨 インドネシアやフィリピン周辺の海面水温上昇
2020年夏 広範囲での豪雨 停滞した前線の影響

今後はどうなる?

異常気象の原因は、前述した通り偏西風やモンスーン等の自然の揺らぎから発生するものも多く存在します。しかし、地球温暖化という人間の手による原因も存在します。IPCCは気候の将来予測として以下の数値をあげています。

  • 世界平均気温変化は0.3~4.8℃の範囲になる可能性が高い
  • 平均海面水位の上昇は0.26~0.82mの範囲になる可能性が高い

この数値はRCPシナリオという「温室効果ガスの代表的な濃度の仮定」算出されています。

人間による対策をしなければ、気温や海水面は上昇し、世界に大きな影響を与えかねません。もちろん日本にとっても、異常気象によって影響していることはたくさんあります。

例えば

  • 農作物(高温障害による米の白濁、品質の低下)
  • 洪水
  • 熱中症
  • 生態系の変化(海面上昇によるサンゴの白化)

などです。これらを増やさない為にも、異常気象の原因の一つである、地球温暖化を防止することは大切なことです。

ぜひこの機会に、環境問題の知識を高め、環境に配慮した生活を送ってみましょう。ひとりひとりが少しずつ行動することで、地球の未来が守られます。