ESG情報開示の新たな基準を作るISSB(国際サステナビリティ基準審議会)とは?

COP26の開催に合わせて、2021年11月3日にESGの情報開示における統一された国際基準策定のために発足したISSB(国際サステナビリティ基準審議会)。今回はそんなISSBの概要と設立に至った背景について解説します。

 

ISSBとは

ISSB(International Sustainability Standards Board、国際サステナビリティ基準審議会)とは、企業がESGに関する情報開示を行う際の統一された国際基準を策定するための組織です。IFRS財団の下部組織として、COP26会期中の11月3日に発足されました。2022年6月までに新たな国際基準を策定することを目指しています。

 

IFRS財団とは

ISSBの設立を主導したIFRS財団は、国際会計基準(International Financial Reporting Standards、IFRS)の策定を担う民間の非営利組織です。財団が策定した国際会計基準は世界約150の国と地域で使用が認められており、日本でも海外に進出する企業を中心に導入が進んでいます。

 

設立の背景

今回ISSBが設立されるに至った背景には、ESG関連の情報開示基準の乱立があります。投資家が意思決定を行う際の基準の一つとして企業のESGへの取り組みが評価されるようになる中、その潮流に合わせる形で新たな情報開示基準が相次いで開発・導入されてきました。多様化する投資家の情報ニーズにマッチすることが目指されたわけですが、基準が乱立した結果、投資家にとっては異なる基準を採用する企業同士の比較が難しく、また情報を開示する企業にとっては対応すべき項目が必要以上に増えるなど、様々な問題も発生していました。そこで、既に国際会計基準を提供しており影響力を持つIFRS財団の主導の下、ESG情報の開示における統一された国際基準を作るための組織としてISSBが設立されたのです。

 

ISSBの組織体制について

複数の組織が統合

ISSBには、これまで独自のESG情報開示基準を作ってきた以下2つの組織が2022年6月までに統合されます。

 

・CDSB(Climate Disclosure Standards Board、気候変動開示基準委員会)

環境・気候分野の情報開示のフレームワークを提供する国際的なコンソーシアム。

 

・VRF(Value Reporting Foundation、価値報告財団)

ESG全般の情報開示項目・指標を産業別に提示していたSASB(Sustainability Accounting Standards Board、サステナビリティ会計基準委員会)と、非財務情報も含めた情報開示のフレームワークの開発を行ってきたIIRC(International Integrated Reporting Council、国際統合報告評議会)が今年6月に合併し設立された財団。

 

ISSBが策定する新しい情報開示基準は、TCFD提言の内容に加え、今回統合される複数の団体が提供してきた既存の情報開示基準を土台として作られます。統合によって各団体が持っていた技術や人材、情報などが集約され、より包括的で質の高い情報開示の基準が作られることが期待されています。

 

IASBとの関係性

ISSBは、IFRS財団の傘下で会計基準設定を行う主体であるIASB(International Accounting Standards Board、国際会計基準審議会)と並列する形で設置されます。それぞれの組織は独立して運営されますが、財務情報と非財務情報が組み合わさることでより投資家などのニーズに合った情報提供ができるよう、相互に協力しながら基準作りを進めていくとのことです。

 

今後の展望

ISSBは今後、気候関連の情報開示から策定を始め、その後ESG全体の開示についての議論を進めていくとしています。統一された国際基準の導入により透明性が高まることが期待される一方で、開示の項目によっては企業の影響力の範囲外である国の電源事情などが企業の競争力に影響することも考えられます。そこで、各国は自国の企業に不利な仕組みにならないよう、資金拠出や地域事務局の誘致など主導権争いを行っている状況です。2022年6月までにどのような議論がなされるのか注目です。