~環境にやさしい交通インフラ~ ラウンドアバウトが実現する持続可能な開発目標(SDGs)

日本では、十数年前までラウンドアバウト(Roundabout)はあまり一般的ではありませんでしたが、近年になって国内での導入事例が増え、その存在が広まりつつあります。一方、欧米では古くからラウンドアバウトが導入され、一般的な交通制御手法でした。

本記事では、ラウンドアバウトの機能と特性を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)の観点からその重要性を探り、ラウンドアバウトの起源、歴史、環境への影響、そして交通事故防止における優れた特性に焦点を当てます。

 

ラウンドアバウトとは?

ラウンドアバウトは、道路交差点の形態の1つで、日本では環状交差点とも呼ばれます。
環状交差点内には信号機は設置されず、車両は右回り(時計回り)で走行し、出口に進みます。交通の円滑化や事故の防止、環境への配慮など、多くの利点を持つものです。

 

ラウンドアバウトの成り立ちと歴史

ラウンドアバウトは、19世紀にイギリスで始まりました。初期のラウンドアバウトは、馬車の交通を効率的に管理するための手段として考案されました。その後、自動車の普及とともに、ラウンドアバウトは世界中で導入され、特に欧米で一般的な交通制御方法として定着しました。

 

日本での導入状況

日本では、2014年頃導入が始まりました。その後、ラウンドアバウトによる様々な効果を受けて、導入エリアが拡大し、2023年3月末時点では、40都道府県、155箇所に導入されています。

※出典:警察庁 交通規制資料

 

ラウンドアバウト導入当初は、交通混雑や事故防止対策の一環としての意味合いが強かったものの、近年では、環境への配慮の面において優れていることから、SDGsの観点からも、その機能性が再認識されました。現在では、新しい道路インフラの一部として、ラウンドアバウトの導入が一般的になりつつあり、交通の円滑化と都市環境への負荷軽減を考慮した、持続可能なインフラ設計の一環として位置づけられています。

 

ラウンドアバウトの構造と環境への影響

ラウンドアバウトは、その独自の設計によって、信号機の使用を最小限に抑え、交通の流れを効率的に調整します。これにより、交通渋滞の緩和、排ガスの削減、およびエネルギー効率の向上など、環境への影響を低減するのに役立っています。

以下がSDGsの観点から見たラウンドアバウトの特性です。

 

1.交通の効率化

信号機の代わりに環状交差点内の通行を右回りに走行することで、交通のスムーズな流れを促進します。これにより、渋滞を軽減し、排ガスの発生を削減し、エネルギーの無駄を防ぎます。SDGsのうち、特に「住み続けられるまちづくりを」(SDGs の11番)に向けた努力に貢献します。

 

2.災害時の交通制御

信号機を必要としないため、災害などによる停電時でも交通の円滑化が維持されます。このため、信号機が停止することによる混乱や事故のリスクを低減され、「気候変動に具体的な対策を」(SDGs の13番)へ寄与します。

 

3.CO2排出の削減

信号待ちによるエンジンのアイドリングを減少させる他、減速と停止が少ないため、車両の燃料効率を向上させ、CO2排出を削減します。こちらも、気候変動に具体的な対策を」(SDGs の13番)への貢献につながります。

 

4.都市計画と景観への貢献

ラウンドアバウトは美しい景観を提供し、都市計画においても優れた選択肢です。緑地や花壇を中央に配置し、周囲の道路を美しく装飾することができます。これにより、都市の美観向上に貢献し、「持続可能な都市とコミュニティをつくる」(SDGsの 11番)に寄与します。

 

交通事故防止とラウンドアバウト

交通事故防止においても、ラウンドアバウトは高い効果を発揮します。主に以下の点に起因しています。

 

1.速度の緩和

車両が低速で進行するため、交差点での急な制動が必要ありません。これにより、事故の発生確率を低減し、安全な環境を提供することで、交通事故による死傷者数の削減に寄与します。

 

2.衝突の軽減

衝突の角度を緩和し、衝突の衝撃を減少させます。これにより、事故の被害を最小限に抑えます。

 

3.交通の混雑

渋滞を減少させるため、車両密度が低くなります。これにより、交通の混雑によるストレスや急発進に伴う事故の可能性が低減します。

 

まとめ

ラウンドアバウトは、SDGsとの緊密な関連性を持ち、環境への配慮、交通事故の予防、そして交通の効率化において重要な役割を果たしています。その特異な設計と運用方法により、SDGsの多くに貢献し、都市計画と交通インフラの分野で注目を浴びています。

 

ラウンドアバウトは、都市とコミュニティの発展において有益な選択肢であり、その効果を最大限に活用することで、より持続可能で安全な環境の実現を促進できます。交通の円滑化と事故の予防はもちろんのこと、ラウンドアバウトはSDGsの達成に向けた強力な味方であり、その普及と適切な設計を通じて、より良い未来を実現できるでしょう。