世界的な環境問題「砂漠化」を理解する

日本ではあまり馴染みのない「砂漠」。実は砂漠の面積が増える「砂漠化」という現象が進んでいることをご存じでしょうか。しかも被害は深刻で、影響は日本を含む世界に及ぶとされています。この記事では、砂漠化の原因やどのような影響があるのかを詳しく説明します。

砂漠化とは

砂漠化とは何を指すのか

「砂漠」というと、砂だけの土地を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、それだけではなく、雨が少なく植物がほぼ生えない土地のことを砂漠と呼びます。

砂漠化は「極乾燥地域、乾燥地域、半乾燥地域、乾燥半湿潤地域における気候上の変動や人間活動を含むさまざまな要素に起因する土地の劣化」と砂漠化対策条約で定義されています。つまり、今まで緑が生えていた場所がさまざまな要因で土壌が劣化・乾燥し、不毛な土地になってしまうことを指します。土地の劣化は、どの地域でも起こる可能性はありますが、特に乾燥地における劣化を砂漠化と呼んでいます。もともと植物が育たなかったり、人が住めなかったりする土地では砂漠化は発生しません。

また、乾燥度指数(乾燥度指数=年間降水量÷年蒸発量)によって、4つの区分に分かれているので簡単に解説いたします。

乾燥地域の区分

極乾燥地域

乾燥度指数は0.05未満

雨期がなく、人間活動に極めて制限的な地域である。とても乾燥していて植物がほぼ生えていない。

乾燥地域

乾燥度指数は0.05~0.20

年間降水量が冬:200mm未満、夏300mm未満で、50~100%の間で年変動する地域である。乾燥していて植物があまり生えていない。

半乾燥地域

乾燥度指数は0.20~0.50

雨期があり、年間降水量が冬:500mm未満、夏800mm未満で、25~50%の間で年変動する地域である。極乾燥、乾燥地域に比べ水に恵まれている。植物の種類、量が豊か。

乾燥半湿潤地域

乾燥度指数は0.50~0.65

降水が25%未満で年変動し、非灌漑農業(用水路などを使用しない農業)が広く行われている地域である。季節によってできる川のそばには木が並び、地表に多く草が生えている。

 

この4つの地域を合わせると地球の41%が乾燥地域ということになります。なぜこんなにも土地が乾燥し砂漠化してしまうのでしょうか。

砂漠化の要因

砂漠化はどのように起こってしまうのでしょうか。まずは2つの要因について解説します。

気候的要因

地球の構造上、赤道付近は乾燥化するため広く砂漠が見受けられます。しかし、近年は気候変動や干ばつなどの地球温暖化の影響により土地の水分が無くなったり、ひび割れが起きたりして砂漠化が進行しています。

 

例えば、砂漠として有名なサハラ砂漠。古代は緑に覆われていたであろうことが壁画から分かっています。古代人が描いたとされるこの壁画はサハラ砂漠の奥地、タッシリ・ナジェールという地域で発見されました。この「タッシリ・ナジェール」という地名は現地語で「水流の多い場所」を意味していますが、現在の年降水量は20ミリ程度です。

東京都の2022年の降水量は年で1615.5ミリ(※)なので、非常に雨が少ないことが分かります。

※出典 気象庁

人為的要因

過度な耕作や放牧、伐採により土地が変化してしまいます。

放牧された動物が多いと放牧地の植物が育つ前に刈り取られてしまい、食物連鎖のピラミッドが崩れてしまいます。それにより植物の枯渇に繋がり、砂漠化の要因となります。また、貧困や人口増加による農業の急増等も大きな要因のひとつとなっており、畑の作りすぎで砂漠化が進行している地域も少なくないのです。

砂漠化の原因

気候的要因や人為的要因によって砂漠化の原因である風食や水食、塩害が引き起こされます。これらを簡単に解説いたします。

風食

風が吹くことによって地表の土や砂などが飛ばされます。地表の肥沃な土が風に流されると植物の根が浅くなり、しまいには枯れてしまいます。この現象を風食といいます。風食された土地は植物が育たず土地が劣化します。

水食

雨と水の流れにより地表の土が流され、地面の厚さが薄くなる現象があります。これを水食といいます。土の厚さが薄くなったことにより土の保水力が弱まり、ひび割れが発生します。そのような土地では植物は育たなくなるので、こちらも土地の劣化によって砂漠化となります。

塩害

耕作する際に用水路を使用して水をまくことがありますよね。植物が吸い上げる水以外に土から蒸発する水があります。太陽が強く照り付ける土地では水の蒸発が早く、土の塩分が高くなり地表に塩を発生させます。この現象を塩類集積というのですが、地表に蓄積された塩は植物に悪影響なため、植物を枯らしてしまい土地を劣化させてしまう原因になるのです。

砂漠化の影響と対策

砂漠化が引き起こす影響

日本に砂漠はありません。そのため砂漠や乾燥地域を見ること・考えることは少ないと思います。しかし世界の41%の土地が乾燥地域に直面しており、現在も砂漠化は進行しています。直接的な影響はその土地に住む人々が受けますが、間接的に影響を受ける人口は約65.1億人にものぼると言われており、そこには私たち日本人も含まれています。なぜこんなにも多大な影響を受けるのでしょうか?

 

まず、乾燥地域に住む人々は家畜や農業などの一次産業をしていることが多いため、砂漠化が進行すると継続が困難になります。そしてその土地の生産に頼っている世界各国の人々に影響が出てしまうのです。日本は世界第4位の貿易大国で、さまざまなものを世界各国から輸入しており、世界で大きな変動があった場合受ける影響も非常に大きいです。

例えばウクライナとロシアの紛争による燃料費高騰。それに伴う電気代の高騰は多くの人を悩ませていますね。このように砂漠化がどんどん進行し作物が獲れなくなってしまった場合、日本でも多大な影響を受けるのです。

 

また、一次産業の継続が困難になった住民は売るもの・食べるものがなくなり、貧困が加速するでしょう。この先、サハラ以南からヨーロッパなどに職や土地を求めて6000万人が移動する可能性があると言われています。そしてその結果、社会的混乱や紛争などに繋がってしまったり、移動しても職に就けず犯罪に加担してしまう人も増えてしまったりすることが危惧されています。貧困や紛争など、人々の日常的な生活を失う社会的問題に発展してしまうのです。

 

他にも、砂漠化した土地は植物が育たなくなり、生物多様性の損失や絶滅危惧種の増加につながるとともに、光合成による二酸化炭素の吸収もなくなるので、気候変動の問題にも影響を与えます。

対策と取り組み

国際連合では、砂漠化の進行を止めるため「砂漠化対処条約※」を結んでおり、日本もこれに参加しています。この条例では、まず解決すべき問題として「貧困をなくす」「食料の確保」「人口変化の予測」「持続可能な自然資源の管理」「教育の充実」などが挙げられています。

※出典 外務省

 

他にもNGO団体が行っている「緑のサヘル」では、ブルキナファソ、チャド共和国で未来を見越した対策がなされています。砂漠化によって貧困になった住民の問題は今を乗り越えることかもしれません。しかし、今だけでなく未来につなげるために植林ができる生活づくりから進めており、水食による農地の再生などに取り組んでいます。

また、国際協力機構のゼネガル國劣化土壌地域の抑制と有効利用促進のための能力向上プロジェクトや、国際農林水産業研究センターのアフリカ・サバンナ地帯における持続的生産のための農業技術の確立など様々な取り組みがなされています。

まとめ

わたしたちにとっては馴染みのない砂漠化ですが、世界では大きな環境問題です。

この記事を読んで砂漠化現象に少しでも関心を持っていただけたら幸いです。関心を持つ人が増えることで、砂漠化防止のための行動を起こす人の増加にも繋がるでしょう。