レジャーでもSDGs!サステナブルツーリズムのすすめ

SDGsが話題になることが多い昨今。レジャーでも取り組みが行われていることをご存じでしょうか?「持続可能であること」を注視した旅行、サステナブルツーリズムについて詳しく紹介します。

サステナブルツーリズムとは?

「サステナブルツーリズム」という言葉を、あまり聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。直訳すると「持続可能な旅行」。

観光地本来の姿を、この先の未来も保つことができるように、サービスや開発の在り方を見定め、旅行を行うという意味です。言い方を変えると、地域の資源である「伝統」「文化」「地域に暮らす人々」そして「自然」を活かして、ゲスト(旅行者)を受け入れ、地域の経済を発展させるということです。

 

戦後、たくさんの観光地では旅行者が増え、許容範囲を超える観光客が押し寄せることが多くなりました。それにより引き起ったのは、ゴミ・トイレ不足、渋滞、騒音問題など。観光客が増えたせいで、深刻な環境問題になる地域もありました。そういった背景があり、観光地の地域社会や自然環境に十分配慮し、旅行する「サステナブルツーリズム」が展開されるようになったのです。

さらにサステナブルツーリズムが注目されるようになったのは、2015年に国連サミットで制定された「SDGs」の影響が大きいでしょう。

SDGsは、環境問題や貧困・飢餓など現代社会の課題解決ための目標です。17つの項目を2016年~2030年までに国連加盟193か国が達成することを目標としています。

17つの目標のうち「8:働きがいも、経済成長も」「12:つくる責任、使う責任」、「14:海の豊かさを守ろう」が観光について明記されているテーマとなっています。

日本の取り組み

それでは、実際にどういった「サステナブルツーリズム」があるのでしょうか?まずは日本での事例を紹介します。

~岐阜県~

岐阜県は日本のサステナブルツーリズムの先駆者です。なんと外国人宿泊者数が2009年からコロナ禍前までの約10年間で、12倍にも増えました。

岐阜県のサステナブルツーリズムの出発点は「岐阜の宝もの認定プロジェクト」というプロジェクト。世界遺産の白川郷や、1300年以上続く鵜飼(長良川)、日本三大名泉のひとつである下呂温泉などは有名ですね。実は、他にもまだ観光資源になっていない伝統文化や豊かな自然環境など、古くから受け継がれている地域資源がたくさんあるのです。

しかし「ある」だけではサステナブルツーリズム・観光客の増加には繋がりません。

地域資源をしっかりと発見し、磨き、発信して新たな付加価値のある観光資源にするべく、岐阜県は積極的に取り組みを行いました。

「知ってもらおう、見つけだそう、創りだそう ふるさとのじまん」を合言葉に、県民1人1人が地域資源を発見し、磨き、発信を続けました。

そういった活動の結果「小坂の滝めぐり」など6つの資源が、県の観光資源として「岐阜の宝もの」に認定されました。こうした活動は「日本の源流に出会える旅」として外国人宿泊者数の増加に繋がったのです。

現在では、岐阜県の特産品を常に取り扱いしているショップが、米国、豪州を始めとした世界8ヵ国で13店舗、飛騨牛などの県産品を使用する星付きレストランが英国、ドイツなど12カ国で51店舗を展開するまでになっています。

~山形県~

日本人がイメージする山形県といえばさくらんぼや芋煮、将棋の駒などがありますね。しかし実は「山伏修行」ができる数少ない県でもあり、それが外国人観光客に好評だと言うのです。

 

日本人ですらあまりピンとこない山伏修行に注目した理由は、「国籍を問わない経験ができるから」とのこと。「山伏道プロジェクト」では、「大聖坊」という宿坊13代目の星野尚文先達の山伏修行や、宿坊の巡礼体験を英語で説明しています。

山伏が体験した修行の足跡を自ら体験し、自然についてじっくり考える経験は国を超えた共通体験となり、言葉を超えた理解が生まれます。山形県のサステナブルツーリズムは、文化や歴史を共有することが目的ではないのです。

山伏修行は「自然に身を置き、感じたことに思いをめぐらせる」という学問であり「受けたもう」という精神性を身に付けるためのもの。そんな山伏修行をするためだけに訪日する方、リピーターになる方、なかには正式な山伏になる方もいるそうです。

このように国籍を問わず多く方々の人生に、深く響く体験を提供しています。

~徳島県~

SDGsが制定されるずっと前に「ゴミをゼロにする」という「ゼロ・ウェイスト宣言」を日本で初めて行った町、それが徳島県勝浦郡にある上勝町です。上勝町はリサイクル率80%以上をキープしている日本でもトップクラスのゼロ・ウェイスト地域。そのリサイクル率を保つために、ゴミは45分別にもなっています。

 

そんな上勝町にあるゼロ・ウェイストホテル「HOTEL WHY」。

上勝町唯一のごみステーションの敷地内にあるユニークなホテルは、2020年5月末にオープンし、同年8月以降は稼働率7割を維持する人気ホテルとなりました。人気の理由は「ゴミ」に関する体験が数多くできること。SDGsの目標12、「つくる責任、使う責任」に意識をむけるきっかけになると注目を集めています。

宿泊客はゴミステーションなどの見学や、自分が滞在中に出したゴミを45分別することで、「ゴミとは何か」を考えていきます。また、客室には使い捨てのアメニティやレンタルパジャマを置かず、歯ブラシはゲストに持参をお願いしています。そうすることで使い捨てのプラスチックや洗濯にかかる水や洗剤を極力なくしています。

他にも石けん、コーヒー豆、茶葉はフロントで必要な分のみ測って渡すことで、徹底的にゴミを出さない仕組みになっています。

世界のユニークなサステナブルツーリズム

サステナブルツーリズムは日本だけではなく、世界中で展開されています。外国ではどういった取り組みがあるのでしょうか?

フィンランド~

2022年にオープンのエコホテル「Arctic Blue Resort」首都ヘルシンキから北東に450km離れたコンティオラハティに位置しているこのホテルはコンティオハラティ市と一緒にコンセプトを考案。「サステナブルな取組みをリードしていくような存在になる」を目標に、作られました。

このホテルは、「ゲストがCO2(二酸化炭素)排出量を削減する体験・活動に参加する場合、宿泊料金が割引される」世界で初めてのホテルです。

水・電気の使用量、食事の選択などによって、宿泊費用の合計金額から割引され、近隣の森に木を植える、といった滞在中のアクティビティも価格に影響。

そのほかにもホテル自体が天然素材を使用してつくられていて、再生可能エネルギーで敷地内全体の暖房と電気をまかなっています。敷地内での移動は電気自動車で、再生可能エネルギーを動力源とした独自の水処理システムを備えています。まさにホテル全体がサステナブルですね!

~イギリス~

イギリスの旅行代理店『Byway』は、とても珍しい代理店です。どういった点が珍しいかというと、”航空機を使わない”陸路専門であること。

この先、人為的な温室効果ガス排出量の5.3%が、観光における移動により発生する、と予測されています。移動で発生する炭素排出量の90%以上は航空機が原因といわれている中、航空機を使わず陸路でのオーダーメイドの旅程を提供するBywayは注目を集めています。

また、Bywayの旅行の提案の仕方も非常にユニーク。

サービスサイトで「Build your holiday (あなたの休日を作る)」と書かれたボタンを選択すると、「あなたが楽しめそうな休日の写真はどれ?」と問われ、写真の選択を促されます。こうした項目に楽しんで回答をしていくことで、ゲストに適した提案が受けられるため、特別サステナブルな旅を求めていない利用者にも人気となりました。旅先や旅行プランからどれがいいかと選択するより、自分好みの写真を選んでいくのは直感的で、わくわくしますよね。

リリースして半年以上経ちますが、サービスの予約者は絶えないそうです。

~コスタリカ~

実はコスタリカは1990年代初頭には、すでに「サステナブルツーリズム」を売りにし、毎年約100万人もの観光客が訪れている国です。中米に位置し、生物多様性に富んだ自然環境がとても人気となっています。

国・地域がひとつになり、自然や文化の大切さを観光客に伝え、その価値を広く理解してもらうことにより保全を推し進めています。つまり自然や経済を十分に維持しつつ、観光客には楽しみだけでなく学びも提供しているのです。こうした取り組みは着実に成果に繋がり、コスタリカの森林率(森林の専有面積)は、この40年ほどで2倍以上に増加したとのことです。

 

そんなコスタリカでは近年、新しい取り組みが始まりました。

それは「観光客が自身の旅行に伴うCO2(二酸化炭素)排出量に対し、カーボンオフセットを行うかどうかの選択ができる。」というもの。カーボンオフセットとは、努力しても削減できないCO2(二酸化炭素)の排出について他の部分で埋め合わせをすることを指します。具体的には旅行の際に排出されたCO2を処理する際、必要な植林のために必要な代金を支払うなどがあります。

 

国が政策としてゲストにカーボンオフセットを積極的に勧めるのは世界初となり、世界中から注視されています。

 

「サステナブルな選択を」「環境に良い選択を」と言っても、最初の一歩がなかなか踏み出せない方や何をしていいのかわからない方も多いと思います。

しかし実は身近にあるレジャーから始められることも多くあるのです!

まずは「旅行先のアクティビティ」として、楽しんで体験したのち、実際の生活に取り組んでみてはいかがでしょうか?