【よくわかる】グリーンカーボンって?
ヒトや動物は呼吸により酸素を吸収し、二酸化炭素(CO2)を排出します。植物は逆で光合成においてCO2を分解し、酸素を排出しています。このような活動で植物が吸収・蓄積した炭素を「グリーンカーボン」と呼び、さまざまな理由から注目されています。注目の背景など詳しく説明いたします。
グリーンカーボンって?
グリーンカーボンとは陸の植物が二酸化炭素(CO2)を吸収して貯蔵した炭素のことを指します。光合成の活動によって吸収したCO2を植物組織や土壌に貯蔵することによって、地球上の炭素を長期間定着させることができるのです。このような働きが地球温暖化を緩和・防止につながるとされ、注目を集めています。
陸に生息する植物(森林や草原、熱帯雨林など)を「グリーンカーボン生態系」と呼びます。
ブルーカーボンとの違い
「グリーンカーボン」とあわせて『ブルーカーボン』というものがあります。どちらもCO2を吸収して貯蔵するものですが、対象とする生物が異なります。
グリーンカーボンは陸上の生態系を指しますが、ブルーカーボンは主に海洋や水域生態系に焦点を当てたものです。具体的には、藻場やマングローブ林などの海洋や沿岸の生態系を指し、これをブルーカーボン生態系と呼びます。
当初まとめて考えられていたこの二つですが、2009年の国連環境計画(UNEP)の報告書において明確に分けられました。
より詳しい説明はこちらの記事を参考にしてみてください。
注目の理由
グリーンカーボンに注目が集まっている理由はいくつかあります。それぞれ解説いたします。
環境問題
地球温暖化はさまざまな異常気象と関係があると考えられており、CO2の排出量が多いと環境問題に繋がるとされていることをご存じの方も多いのではないでしょうか。
グリーンカーボンは、CO2の排出を削減し、または取り除く手段として見られています。気候変動の影響がより顕著になる中、地球温暖化の抑制やCO2の排出削減が世界中の課題となっています。そのため、CO2の吸収や貯蔵に焦点を当てたグリーンカーボンの技術やアプローチが注目を集めているのです。
SDGsの達成に向けて
2030年までに17の目標達成を世界中のみんなで目指すSDGs。
目標の中には環境問題に関わるものも多くあり、特に次のような目標はグリーンカーボンと密接に関連していると考えられます。
・目標13:気候変動に具体的な対策を
先述した通り、グリーンカーボンは、CO2の排出削減や吸収・貯蔵を通じて、気候変動への対策に貢献します。
・目標15:陸の豊かさも守ろう
グリーンカーボン生態系である森林の保護や再生、陸地の生態系を守ることは、生物多様性を保ち、土壌や植物を通じてCO2を吸収することになります。
カーボンニュートラル・カーボンオフセット
SDGs達成のために世界中が協力しており、特に影響力が大きい大企業でもCO2の削減や環境保護に取り組んでいます。もちろん日本の企業も例外ではなく、さまざまな活動を行っています。その活動の中に、企業や団体がどうしても排出してしまうCO2と同じ量だけ削減する「カーボンニュートラル」という考えがあります。
このカーボンニュートラルが浸透する前から、環境省主導のもと日本国内で進んでいた取り組みが「カーボンオフセット」です。カーボンオフセットは企業・団体でどうしても削減できない温室効果ガスを植林や森林保護等で相殺させることを指します。
具体的な違いは、カーボンオフセットが相殺手段の一つとして特定の排出を相殺するのに対し、カーボンニュートラルは、全体的な排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)に近づけることを目指す総合的なアプローチです。
J-クレジットについて
J-クレジット制度は、温室効果ガス(GHG)削減量を計測・評価し、認定する制度で、日本国内のカーボンオフセット市場で使用されるクレジットです。企業や個人が自身のCO2排出量をオフセットするための手段として利用されています。
具体的には、省エネ機器や太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入などを行い、削減できた温室効果ガスや、植林事業などで吸収できたグリーンカーボンの量を「クレジット」として国が認めてくれるというもの。
このクレジットは売却も可能で、ビジネスに活用することもできるため、多くの自治体や企業が活用しています。
関連する課題
国土の3分の2が森林面積と言われている日本。豊かな緑に囲まれて生活しているため、あまりピンときませんが、世界中では森林破壊がものすごいスピードで進んでいます。森林が減るということは、グリーンカーボンとして固定されるCO2も減るということ。
森林破壊はさまざまな要因によって引き起こされており、日本においても使用木材の7割ほどが海外の輸入に頼っている現状があり他人事ではありません。
森林破壊の詳細についてはこちらを参考にしてください。
まとめ
環境問題がなぜ起こっているのか、どうすれば緩和・解決に向かうのかを知ることは非常に大切です。グリーンカーボンなどの用語について知ることも環境問題解決の第一歩と言えます。
ひとりひとりが知識をつけ、できることを継続して行うことで環境問題の緩和に繋がるでしょう。この先も美しい地球に住み続けるために、積極的に知識を身に着けていきましょう。