対策はある? 太陽光発電の電圧抑制が起こる仕組みと原因
太陽光発電を利用する上で知っておきたいのが「電圧抑制」です。電圧抑制が起こる仕組みと原因、そして電圧抑制の発生回数を少なくなるための対策について解説します。
太陽光発電の電圧抑制とは
太陽光発電における電圧抑制とは、太陽光発電で得た電気の電圧が必要以上に上昇しないよう、パワーコンディショナーによって電圧が抑制される現象のことを指します。
パワーコンディショナーは太陽光発電で創った直流の電気を、家庭内で使用できる交流に変換するためのインバーター機能を持つ装置です。また同時に、太陽光発電で創った電気の電圧を一定に保つためのコンバーター機能も備えています。
太陽光発電の電圧抑制と関係があるのは後者のコンバーター機能です。まず、電気は電圧の高いところから低いところに流れるという性質を持っています。そのため余剰電力を売電する際には、住宅内の電圧を電線側の電圧よりも高く保っておく必要があります(ちなみに、売電のための特別なケーブルがあるわけではなく、売電用に電気を送るときも、普段、買電しているときと同じ電線を使います)。しかし一方で、電柱から住宅に引き込む電線(引き込み線)と太陽光発電の電線を結ぶ接続点の電圧は、電気事業法に基づいて95~107Vの範囲内にとどめておかなければなりません。
パワーコンディショナーはこの条件を満たすため、住宅の電気消費量と発電量のバランスの変化に応じて電圧を上昇させつつ、電圧が高くなりすぎるとそれを抑えるために電圧抑制を行います。
注意したいのは、電圧抑制機能が働くと、太陽光発電による発電量が少なくなってしまうこと。その分、売電量が減ってしまいます。効率的な売電をするには、電圧抑制は起こらない方が望ましいと言えます。
太陽光発電の電圧抑制が起こる原因
太陽光発電の電圧抑制はどのようなときに発生するのでしょうか。電圧抑制が起きやすい状況として、周辺施設の影響を受けて電線内の電圧が上がる場合と、配線の問題で自宅の電圧が下がる場合との2つのケースが挙げられます。
周辺環境による電線内の電圧上昇
周辺に大きな工場や商業施設があると、そのエリアの電気供給の電圧が最初から高めに設定されていることがあります。電気の消費量が多いときは電柱側の電圧が下がるので売電できるのですが、それらの施設が休みのときなどは電気使用量が減って電線内の電圧が上昇し、それに対応するため住宅側の電圧が上がりすぎて、電圧抑制が起きてしまいます。
あるいは近隣の多くの家庭で太陽光発電を使用していると、同じようなタイミングで一斉に売電量が増加し、そのエリアの電気が余っている状態になると、やはり電柱側の電線内の電圧が上昇して電圧抑制につながります。
自宅の配線の問題による電気抵抗
太陽光発電では、電柱から自宅の家屋までの間を引き込み線と呼ばれる電線で接続します。この引き込み線が細いほど、電気抵抗が大きくなって電圧は上昇します。また変圧器(トランス)の付いている電柱からの距離が遠いか、引き込み点からパワーコンディショナーまでの距離が遠い場合も、同じように電圧は上がります。
このような状況で電圧が高くなったときもパワーコンディショナーが電圧抑制をして、107V以内に電圧を押さえ込みます。すると住宅側では電圧降下が起き、売電ができなくなります。
電圧抑制が起こった場合の対策
電圧が95~107Vの範囲内を超えようとしたときに一時的に電圧抑制が起こるのは正常な動作です。しかし、頻繁に電圧抑制が起こってしまう場合は、何らかの方法で電圧抑制の頻度を下げるべきでしょう。以下で、主な対策をご紹介します。
電力会社に電圧の調整を依頼する
電力会社に相談し、電柱側の電圧が高いということが認められた場合は改善してもらえる可能性があります。測定を取り付けて電流と電圧の測定をし、電柱に設置されたトランスの最大電圧を低く設定するなどの電圧調整が行われることが多いでしょう。ただし、どのように対処するかは電力会社の決定に委ねられます。
パワーコンディショナーの電圧設定値を上げる
パワーコンディショナーの電圧設定値を上げて、電柱の電圧より高く設定する方法もあります。しかし、当然ながら電気事業法による上限値の107V以上にはできないので注意してください。また、家庭内で使用している家電製品が100V対応のものだった場合、110Vなど高い電圧の電気を流すと故障や寿命を縮める原因になることがあります。
自宅の引き込み柱にトランスを設置する
引き込み線の長さを短くするために、電力会社に依頼して自宅の引き込み柱にトランスを新設してもらうという方法もあります。しかし様々な条件にもよりますが、この場合、高圧線の配線やトランス、場合によっては電柱の建て替えなどに要する費用が自費負担となることが多いでしょう。
引き込み線を太いものに変える
前述したとおり、引き込み線が細いほど電気抵抗がかかり電圧は上がりやすくなるため、引き込み線を太いものに変えて電気抵抗を少なくすることも効果が期待できます。ただし、この場合も自己負担工事となります。
太陽光発電の電圧抑制が発生しているかどうかは、パワーコンディショナーの表示ランプやエラー表示で確認できます。気づかないうちに売電量が減っているといったことがないよう、電圧抑制について事前に理解しておきましょう。