未利用の農地を活かして脱炭素社会へ ~ 耕作放棄地の可能性~
近年、農業の後継者不足や少子化の影響を受け、耕作放棄地が増加しています。耕作放棄地は、地域社会と環境に様々な悪影響を及ぼす問題を引き起こしています。
本記事では、耕作放棄地の現状とその解決策に焦点を当て、未来の持続可能な地球環境への貢献について考察します。
耕作放棄地とは何か?
耕作放棄地は、かつては農業活動が行われていましたが、現在はその活動が停滞状態となっている土地を示します。これは、遊休農地や荒廃農地と同類の意味合いを持ち、将来的にも農地としての利用が見込まれない土地として位置づけられますが、性質的な面ではそれぞれ違いがあります。
耕作放棄地:以前に農業が行われていたが、過去1年以上農作業が行われておらず、将来的にも再開の見込みがない土地。
遊休農地:農地法により規定され、用途未確定のまま放置状態にあり、将来的にも農地として使用される見込みのない土地。
荒廃農地:過去に農業が行われていたが、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業が不可能な土地。
耕作放棄地増加の背景
農地面積は、1961年のピーク時の608.6万haから58年間で169万ha も減少しました。2023年度の全国の耕地面積(田畑計)においては、432万5,000haで、前年に比べ2万4,000ha(0.6%)減少しました。これは農業人口の減少、農地の非農業用途への転用、耕作放棄、荒廃農地化が主な原因です。特に、2013年以降は、耕作放棄と荒廃農地化が増加しています。
出典:農林水産省
農業農村振興整備部会
全国耕作放棄地面積の推移について
耕作放棄地の主要な問題点
耕作放棄地は、土地の劣化により再開発が難しくなり、有用な農地資源が浪費され、食料生産の機会を逃す大きな要因となります。この他、景観の荒廃や美観の低下、過疎化などの地域と経済への影響をもたらします。さらに、耕作放棄地は税金負担も大きく、平成29年の遊休農地課税強化により、固定資産税は通常の農地の1.8倍になります。
耕作放棄地対策
多くの地域で顕著に増加傾向にある耕作放棄地は、土地所有者にも地域にも大きなデメリットをもたらします。その対策としては、農地再生利用と他用途への活用の2つに分けられます。
農地バンク制度の利用
農地再生利用では、農地バンク制度が有効です。農地バンクとは、耕作放棄地や有効活用されていない農地を集積・管理し、それらを農業者や希望者に提供する制度で、耕作地の有効活用を促進します。農地の有効利用や耕作放棄地の再生を目指し、地域の農業振興や持続可能な農業の実現に寄与します。
再生可能エネルギー発電所への転用
他用途としては、耕作放棄地を再評価し、新たな資源として活用する方法です。その1つとして、気候変動対策への貢献があげられます。耕作放棄地は地球温暖化を抑制する可能性を秘めており、太陽光パネルを設置し、再生可能エネルギーの発電所として活用することで、環境保護と持続可能なエネルギー供給に貢献できます。
耕作放棄地を再生可能エネルギーの発電所として活用することには、次のメリットがあります。
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温室効果ガス削減
再生可能エネルギーの活用により、化石燃料に依存せず、グリーン電力の供給が可能となり、温室効果ガスの排出を削減できます。これは、脱炭素社会への重要な取り組みであり、地球温暖化の抑制に寄与します。
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地域経済への貢献
耕作放棄地の再生可能エネルギーへの転用は、地域経済にもプラスの影響をもたらします。発電所の建設と運用に伴い、雇用の機会が生まれ、経済的な恩恵が期待できます。
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資源の最大限活用
未利用の農地を再生可能エネルギー発電所に転用することは、資源の最大限活用に貢献します。これにより、土地の浪費が減少し、有用な農地資源を無駄にしないことが可能となります。
耕作放棄地再生利用のメリット
耕作放棄地の再利用は、土地所有者、地域社会、そして地球環境にとって大きなメリットをもたらします。
土地所有者にとっては、未利用の土地が新たな収益源となり、土地の価値が向上する可能性があります。地域社会にとっては、雇用機会と経済的な恩恵が生まれ、地域全体の発展に寄与します。そして、地球環境にとっては、再生可能エネルギーの普及による温室効果ガスの削減が実現し、脱炭素社会への近道となります。
まとめ
耕作放棄地は、地域社会と環境に悪影響を及ぼす問題を抱えていますが、その可能性は無限です。再生可能エネルギーの活用により、耕作放棄地は地球温暖化の進行を抑制し、持続可能な未来の構築に向けた重要なキーとなります。
私たち一人ひとりが、未来の地球環境を守るためにできることを考え、耕作放棄地の再生可能エネルギーへの転用を支持することは、大きな一歩となるでしょう。未来を見据え、耕作放棄地の可能性を最大限に広げて活かしていきましょう。
耕作放棄地に限らず、環境や生活を見直し、資源を最大限に有効活用するためにはどのような方法があるか。そうしたことを考えることが、未来の地球環境を守るための第一歩です。
意識を向けることで、日々の生活の中で気づくことや疑問に思うことがあると思います。そうした一人ひとりの気づきや行動を活かし、未来の地球をより良い姿にしていきましょう。
※ 再生エネルギーについてはこちらも参照ください。
「進化する太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」とは?」
「未来のエネルギー源 ~ 水素燃料電池 ~」